恋なんてするわけがないっ‼
定時のチャイムがなってから2時間がたった。
やっと終わった仕事の再確認をして、周りを見渡すと残っている人も多くて、皆少し疲れの色が見えている。
無駄なお世話かもしれないが、何もしないでいるのも心残りになりそうなので、給湯室でお茶を入れ始めた。
甘いお菓子を添えてお茶を渡すと、皆お礼を言ってくれる。
「お疲れ様です、どうぞ」
デスクの端にお茶を置くと、あれ、という声が聞こえた。
今置いたばかりのお茶を見て、首を傾げる男性社員。
「どうかしましたか?」
そう声をかけると、もう一度首を傾げて
疑問を口にした。
「さっき加藤さんにはコーヒー渡してなかった?俺のは……これ、ハーブティー?」
お茶の香りを嗅いで不思議そうな顔をする。
その通りだ、今置いたのはハーブティーだ。
私が疲れたときによく飲むもので、思い込みか知らないが、よく効く気がする。
「はい、加藤さんにはコーヒーを、今佐々木さんにはハーブティーをお持ちしました。加藤さんはコーヒーしか飲まないと公言していますし。佐々木さんはそういうのがないので、胃にも優しいものをと。」
話を聞きながら、ハーブティーを何口か飲むと佐々木さんは頷いた。
「ハーブティーって飲んだことなかったけど、結構美味しいね。爽やかで気持ちがリフレッシュされた気がするよ。
………もしかして全員出してるもの違うの?」
「全員っていうわけではありませんよ、コーヒーの人は5人いますし、緑茶の人も何人かいますよ。」
大変じゃない?と問われたが、個包装なので
同じものでも違うものでも、大した差ではない。
コーヒーメーカーは今壊れていて、来週にならないと新しいのが来ない。
たったの数日のことだ。
まあ、それでも面倒を嫌ってかいつも通りにコーヒーを飲まない人は少なくないのだけど。
ありがとう、ともう一度佐々木さんに言われたあと、私は櫻井さんを探し始めた。