恋なんてするわけがないっ‼
「藤沢が、優しくて………恋かと勘違いした。………でもある日藤沢が私を恋愛対象外だって言っているのを聞いた。…本人の口から。
私はその時いい気分ではなかったけど、そこまで悲しくならなかった。……だから藤沢への気持ちは勘違いだったの!それだけよ!」
最後はもう躍起になっていた。
こんなことを本人の目の前で白状させられて、というかほぼ告白じゃないか!
恥ずかしさで藤沢の顔を見ることができず、俯くしかなかったはずだった。
「………!?ふ、」
俯いた次の瞬間には、私は顔を上げていた。
藤沢が私を抱きしめている。
少しも身動きできないぐらいに強く。
「……え、何、藤沢…?………………同情?」
『同情』、それしか思い浮かばなかった。
そういった途端に藤沢の体が強張った。
「同情……?同情だと?お前、俺をなんだと思ってるんだ!?」
藤沢の表情を見ようとするが、見上げていても藤沢の表情は見えない。完全に密着しているからだ。
「俺は紀田が好きだ。入社してからずっと。」
藤沢が私を好き?それも入社してからずっと?
ありえない。
「でも、藤沢は私を恋人に出来ないって言った。」
違う、そう言って藤沢は私の両肩を掴んで
距離を取り、顔を見た。
藤沢の表情は後悔しているようなものだった。
「あの時……紀田はあいつのことがあったから、そんな弱みにつけ込むようなことしたくなかった。俺があの時頷いて、それが広まって根も葉もない噂が飛び交ったら紀田の負担になると思ったから。ああ言うしかないだろ………」