恋なんてするわけがないっ‼
━━━17時を知らせるチャイムがなった。
……のは1時間前で、就業時間は過ぎたから
残っている人は3分の1程になっていた。
私は特別急ぎの仕事があったわけではなかったが、そろそろ月末で忙しくなるため、残っている仕事を早めに終わらせておきたくてこの時間までいた。
「紀田さん、この書類見て頂けませんか?」
「どれ、見せて。」
先程からこういったふうに書類の確認を私に頼むのは田邊君だけではない。
ここの企画部の大半は私の所へ持ってきて
確認を求める。
部長だとか課長だとかそういうわけではないのだが、いつからかこうなってしまった。
「ここ、2回も繰り返さなくていいし、
これの説明はグラフ使って。円じゃなくて棒で。それに初歩的なミス……誤字脱字が多い。それくらいは終わったあとにもう一度自分で確認しなさい。」
そう言って書類を返すと、彼は駄目だったかと少し肩を落としたがすぐに姿勢を正して、まるで軍人が敬礼をするように礼を言った。