恋なんてするわけがないっ‼
「紀田」
藤沢にそう声を掛けられて彼を見上げる。
「お前、会社の奴らの前で今日みたいにはしゃぐなよ。」
見た人が消化不良起こすって言いたいのか。
失礼なやつだな、と言おうとした。
「普段とのギャップにやられる。
今日のお前いつもと違って感情のままって感じで、素を見せてくれてる気がするし。」
頭を藤沢の大きな手で撫でられる。
無性に恥ずかしい気持ちになったが、一方でどこか安心も感じている。
「わかりました、見せません。藤沢部長のご命令ですものね。」
わざと会社にいるみたいに言ってみれば、
藤沢は二人の時にそれはやめろ、と言う。
こんな時間がすごく楽しい。
恥ずかしいけど、酔ってた自分を少しぐらいは褒めてあげてもいいかもしれない、と思った。