恋なんてするわけがないっ‼



「紀田さんが見えたので、気が取られて急に止まってしまって……」



可愛らしい笑顔で田邊君はそう言うが、
それはつまり私のせいだってことなのだろうか…。



なんだか腑に落ちない気持ちを持ちつつ、
用紙を全て拾い上げ、結局部署まで一緒に届けに行った。




「ありがとうございました、最後まで手伝って頂いて。」



丁寧に深くお辞儀をして礼をいう彼に、じゃあ帰るわね、お疲れ様と返そうと彼が顔をあげるまで待っていた。



けれども彼がなかなか顔を上げないので、
田邊君、と控えめに呼びかけた。













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