Bar Atelier
「あのっ、オーナーって…」
カウンターにいた綺麗な女の人に声をかける。
「オーナー?何か用?」
「あの俺っ、ここで働きたくて!」
「ああ。ちょっと待ってて」
栗色のサラサラの髪をなびかせスタッフルームに入っていった。
少しすると女の人は戻ってきて、
「中入っていいって」
と、スタッフルームを指差しながら言った。
「ありがとうございます」
そういって会釈をした。
コンコンッ
「どうぞー」
カチャッ
「失礼します」
入ると、茶色の髪を後ろに束ねた、バーテンダーが良く似合いそうな、顔の整った男の人がいた。
「Blackのアキラくん?!」
開けるや否やそう声をかけられた。
Blackとはアキラが少し前まで働いていたBarの名前だった。
「あ、はい、そうっす…」
自分を知ってくれていたことに驚きを隠せなかった。
だがアキラはBlackで1番人気のあったバーテンで、その技術も素晴らしく、そしてその甘いルックスも相乗効果になりバー業界ではかなり有名だった。
「なんでまたウチに……」
「俺、もっと技術磨きたくて、Blackのオーナーから、それならアトリエに行ったらいいぞって」
アトリエのオーナー、三好 一樹は更に有名なバーテンだった。確かに彼も整端な顔立ちだが、それ以上に技術が凄かった。東京では1番と言われる程。