Bar Atelier
「まぁ、アキラくんがウチで働いてくれるなんて美味しい話、蹴る理由も無いし、明日からでも入ってくれる?」
「まじですか!?ありがとうございます!!」
深く頭を下げ、アキラは礼を言った。
「あ、ついでにサクラの歌聴いていきな。もうすぐ出番だ」
「サクラ…?」
名前はよく聞くが、よくは知らなかったアキラ。バーの連中がサクラって騒いでた気もするけど…
オーナーにバーカウンターに連れて行かれると、ちょうど前のバンドが終わった頃だった。
「鳥肌もんだぞ」
ニヤリと笑うオーナー。
パッとスポットライトが当たり、気付くとお客さんが来た時よりも更に押し寄せる様に増えていた。
真っ赤なタイトのワンピースを見に纏った、ブロンドの女の人がステージの椅子に座っていて、その存在感だけでゾクッとした。
スゥッと息を吸うと、ピアノと共に、その華奢な身体の何処から出るのか、甘くて深い声が…奇跡の声が溢れ出した。
もう、鳥肌というか、ビリビリとアキラの身体を麻痺させる程の歌声に、周りの景色や音さえ消えているかの様に、彼女の姿、声だけが映っていた。
歌い終わり、ステージから去っていく彼女。
アキラは身体も心も震えていた。
完全に彼女の虜だった。
追う様にアキラもスタッフルームに入っていった。