君を待ってるから
それから、しばらく経った。
秋に入り始め、冷たい風が頬をくすぐる。
「私ね、凪のこと大好きだよ!」
休み時間、誰もいない教室で秋華が急に言った。
うれしくて照れ臭くて、素直になれなくて。
「は...、何言ってんだよ。」
恥ずかしさを紛らわすために、そんなことしか言えなかった。
「...私、告白のこと、ずっとよく考えてて。短い時間だったかもしれないけどさ。」
オレも、ずっと考えてた。
分からないこといっぱいあった。
「...考えた結果が、凪が好きってこと。だから、ずっと一緒にいたいから...付き合ってほしいの。」
これを二度目の告白と言うんだろうか。
ちょっと驚いて、でも素直にうれしかった。
心のどこかで、告白されたときからきっと、気づいていた。
ーー秋華のことが好きだって。
オレは間違いなく、海華のことが好きだった。
そして、海華に抱いていた感情が、今秋華に抱いている感情と同じだと気づいた。
「...オレも、秋華のことが好きだ。ずっと一緒にいたいって思うよ。」
恋のひとつも分からなかったオレで、鈍感で、不器用。
だけど、オレにも、秋の温かい風が吹いた。