君を待ってるから
今の私は“もと”っていう一人の男の子が好き。
「成瀬くんを傷付けるなんて、できない。」
そこでふと、自分だけが熱くなりすぎていたことに気付き、
「ごめん...。」
といろんな意味でボソッと謝る。
するとーー。
「フフッ」
いつもの優しい感じとはまた違った、無邪気で温かい成瀬くんの微笑みが、こぼれた。
「あの、なんか...ごめんね。私だけ喋って...成瀬くんの気持ちも、ちゃんと聞けてないよね。」
成瀬くんは、瞬きをする間にいつもの優しい笑顔に戻っていた。
あれ...さっきのは、気のせい?
「ううん。もう大丈夫。ちゃんと自分の気持ち、伝えられたから。亜里ちゃんの言うことに納得した。こちらこそ、ごめんね。」
成瀬くんは笑って、私に背を向けた。
ーーさっきの幻のような成瀬くんの笑顔は、夢かな。
気のせいだったのかな。
あの無邪気で温かい笑顔は、何だったのかな。
窓から差し込む太陽の温かな光が、私にそう思わせているようだった。