君を待ってるから

* * *

これは、幼稚園のころの話。

「な~ぎっ!」

「あ、海華。」

オレの前には、悔しいほどに仲が良い幼なじみ同士がいた。

それは、笹原凪と鈴木海華。

そして苦しいことに、オレはその海華ちゃんが好きだった。

でも、仲の良すぎる二人の間に入り込める隙間はなかった。

二人の間に入り込めるほど、オレは器用じゃなかった。

「凪、待て~!」

「追いつけるわけないだろ~っ!」

よく二人で遊んでいて。

それがうらやましくていつも泣いてみんなを困らせていた。

きらいになろうと努力したけど...。

きらいになんてなれるはずなかった。

「...何でもない...。」

もちろん、理由なんて言えなかった。
< 83 / 138 >

この作品をシェア

pagetop