双姫 IV 番外編


『只でさえ今回酷い目に遭ったのに。』


先輩に向き合って頭を下げる。


「それは…この傷は私の責任。
か、樺沢くんがそれを背負う必要はないわ。

それに、この件がきっかけで
お父さんと少しだけ溝が埋まったの。

ありがとう。」


顔を上げると、
そこには一度も見た事がない笑顔。

俺の記憶にある先輩の表情は
儚くて、消えてしまいそうで、
見ていて不安になるものばかりだった。


「だ、だから…樺沢く……あー!もう!!
今更「樺沢くん」なんておかしく感じる!

天空は、悪いって思ってるかもしれない。
それでもね?私が感謝してるから良いの!」


クスッ…


そっか…俺が考えてたよりも
先輩は弱くなんかなかった。

俺の中で新たな想いが芽生える。


この笑顔を俺が守りたい。


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