私を抱きしめて
これが日常

その日はやけに、母が優しかった。

母は夜の仕事をし、帰ってくるのはいつも夜中の2:00近く。
お気に入りのお客さんができれば我が家へ連れ込んでは私は閉め出しをくらい、その人とうまくいかなくなるとお酒を煽っては暴れた。
なにもなくてもいつもピリピリした空気が私たちを包み、眩しいドレスを着て濃い化粧で飾る母を見るのは、正直言って好きではなかった。
父はどこのどんな人かも知らず、母が私に手を上げることが多くても、私は心のどこかで信じていたのだと思う。
今日はなにか嫌なことがあっただけ。
明日になるば明るい陽が差す。
そして、母は私を愛しているはずだと。
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