あなたの願いを叶えましょう
そもそも工藤さんが誘おうとしたのは私じゃなくて友達なんですけど。

そう言い返そうと思ったけど、黒澤波留の耳がほんのり赤くなっていることに気が付いた。

急に怒り出すなんて、もしかして、この人嫉妬している?

いやいやいや。まさか、そんな訳ないでしょう。

『えんに気持がある、ってことでしょ?』

彩の台詞がチラリと脳裏を過る。

もしかしたら―――

「軽いもなにも、私は前向きに婚活している訳だから、黒澤波留にそんな事言われる筋合いないですけど」

工藤さんは私を誘う気なんてさらさらないのだけど、ここは一つ、カマをかけて反応を試してみる。

彼はこちらへ振り向いた。口がへの字に結ばれているので、どうやら気にくわないらしい。

「だからって誘われたら富樫は誰かれ構わずついていくのかよ。それは軽いっていうんじゃないか?そもそも―――」

黙れ、と言う代わりに、私はよく喋る形のよい唇の前に指を一本差し出した。

これは以前に黒澤波留が使った手法を流用したものだ。
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