あなたの願いを叶えましょう
「可愛い格好してんな。今日のディナーのため?」

黒澤波瑠はパソコンの画面を覗き込むふりをして耳元でこそりと囁く。フワリとコロンが香り私の頬が仄かに蒸気する。

「別に。ふつーだけど」

すかしてみても、心の中では喜んでいるのがバレバレだろう。

黒澤波留は目を細めて、形の良い唇の端を微かにあげる。

「それじゃあ、よろしく」と言って、自分の部署へと帰っていった。

「目がはあとー」

黒澤波瑠の後ろ姿をうっかり見つめちゃったもんだから、えりかちんから冷やかされた。

「何をバカな事を」

取り澄ましてパソコンへと向かう。

「わかりやすすぎですよーえんさんは」

そんな私を見て、えりかちんは不敵な笑みを浮かべる。

背後の野口さんがすかさず椅子のキャスターを転がし近づいてきた。

どうやら盗み聞きをしていたらしい。

「あの子はやめておいた方がいいよ」

野口さんは顔でかいけど神妙な面持ちだ。
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