あなたの願いを叶えましょう
彼の名前は黒澤波留。

出世コースの王道と言われている都市事業開発グループの中枢、事業統括部に所属している。

高身長にスラリと長い手足。

ぱっちりとした目がやや垂れているのはご愛嬌。

通った鼻筋に口角のキュッと上がったやや厚みのある形の良い唇。

短く切り揃えた艶やかな黒髪を嫌味なく斜めに流すスタイリングも爽やかだ。

そして物腰柔らかな紳士な態度に女子が10人いたら9人は間違いなく「いいね！」をするだろう。

彼を知る女子なら、誰もが心に憧れを抱く王子さまのような人だ。

私だって例外じゃない。

「女子一人を残す訳にはいかないから富樫さんが終わらないと俺も帰れないんだけどな」

気を使って残ってくれた事を心苦しく思う反面、私を気に掛けていてくれた事を仄かに嬉しく思ってしまう。

全くその状況に気がついていなかったんだけどね。

「申し訳ありませんでした。データ保存したら帰りますね」

デスクトップに幾重にも開いていたファイルを上書き保存しながら慌てて閉じて行く。
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