あなたの願いを叶えましょう
9. 王子のジャッジ
そして月曜日

少し早めに出社して仕事をしていると、病みあがりの梁川さんが菓子折りを携えて私のデスクまでやってきた。

「ほんの気持ちですのでお納めください」

梁川さんから、ずずいと羊羹で有名な老舗和菓子屋の箱が差し出される。

「いえいえ、お気持ちだけで結構です」

しきたりに従い、三度ほどお断りするやりとりをした後に、羊羹の入ったずしりと重い箱を受け取った。

「お気遣いいただいてありがとうございます。実はここの羊羹大好きなんです」

小洒落た洋菓子ではなく、定評のある和菓子をチョイスしてくる辺りが、梁川さんらしい。

「えーなになにー」

美味しいものの話しを聞きつけて野口さんとえりかちんがわらわらと集まってきた。

羊羹の箱を見てハイエナの如く二人の目がギラリと光る。

「冨樫さんには先日助けていただいて、本当に感謝しているの。今度主人と一緒に夕飯をご馳走させてね!」

梁川さんは私の両肩に手を置き大きな瞳に潤ませてじっと見つめてくる。
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