あなたの願いを叶えましょう
「っだー！」

暴走しかけた妄想を振り払おうと、奇声を発する。

隣に座るえりかちんがビクっと肩を痙攣させた。

「大丈夫ですか…？えんさん」

怯えながら遠慮がちに尋ねる。

「ごめんごめん、ミスタッチしちゃってさ」

私はテヘッと笑って誤魔化す。

誤魔化しきれてないと思うけど。

そんな安定しない情緒で暫く仕事をしていると、部長と課長と義姉の梁川さんと共に戻ってくる黒澤波瑠の姿が見えた。

だだっ広いフロアに阻まれてその表情までは伺い知れない。

何を話したのだろう。大丈夫だったかな。

今すぐにでも駆け寄ってって話しを聞きたい。

だけど、仕事中なのでそんな訳にもいかないのがもどかしい。

席に戻る途中の黒澤波瑠が私の席の近くを通りかかる。

その気配だけで、私は反射的に顔を上げると、目があった。

彼は私のなかのモヤモヤを見透かしたように薄い唇の端を微かに上げる。

なんだかそれだけで胸が苦しくなってくる。
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