あなたの願いを叶えましょう
午後8時30

定時はとおに過ぎたので、フロアを見渡すとポツポツとしか人が残っていないので、広いフロアがガランとしている。

振り返ると四列先のデスクに黒澤波瑠の姿を見つけた。

チャンス

書類をプリントアウトして、席を立つ。

休憩室に立ち寄って、缶コーヒーをに二本買って黒澤波瑠のもとへと向かう。

「お疲れ様」

彼が時折そうしてくれるよう、デスクの上に缶コーヒーをそっと置いた。

不意を突かれたのか、大きな目を見開き、黒澤波瑠がこちらを見上げる。

「あの、いま話せる?」

梁川さんはもちろん、彼のチームの人達はみんな帰ってしまったようだ。

デスクのパソコンは閉じられている。

「座れば?」

促されて、黒澤波瑠の隣の席に腰を下ろした。

デスクマットに、かわいい女の子と、ヘタレの後輩花本が満面の笑みを浮かべて写っている写真が挟まっているのが目に止まった。

青い海と青い空、白い海岸にヤシの木という風景からするとハワイ辺りの南国のようだ。
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