あなたの願いを叶えましょう
「それで梁川さんは?」

「体調が良くないから、ステイを希望してた。善処する、って片瀬課長も言ってたから、恐らく異動はないと思う」

「そっか、よかった」

うそ…全然よくない。

それで黒澤波瑠が異動なるなんて嫌だ。

何処にも言って欲しくない。

異動を阻止するためにしゃちょーへ脅迫文を送ろうか、なんて稚拙な考えが一瞬本気で頭を過ぎった。

職場が離れたら黒澤波留の笑顔とはもう会えなくなってしまう。

だって私たちは仕事でしか繋がりがないのだから。

「なんか食べてく?この間、ドタキャンしたお詫びに奢るよ」

まさかのお誘いに鼓動が跳ねる。

「奢りなら、いく」

落ち込んだ気分から一転、嬉しくて頬が緩みそうになる。

私はそれを押し殺そうとギュッと横に結ぶ。

誤魔化せていたのかは微妙だけれど。
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