あなたの願いを叶えましょう
暇なのか厨房にいたナオシもいつしか私の隣に座っていた。

「波瑠がいなくなって寂しいって泣いてるんだぞ?こんな自分の弟を思っていたくれたら兄として放っておけないだろ」

「別に好きじゃありませんよ!」

声を張って否定した後、小瓶のシンハービールを一気に飲み干す。

「全然好きじゃないですけろ…会えなくなるのは、正直寂しいです。同期として!」

言ったそばから、目頭がジワリと熱くなる。私は手の甲でゴシゴシと涙を拭った。

「波瑠がベトナム行ったら、ホーチミンで日本食屋でも開けばいいさ」

ナオシは私の肩にさりげなく手を回す。

私が妄想したホーチミン支社へ赴任、という悪夢のシナリオをビール三杯目あたりで黒澤兄弟に話して聞かせた。

「だから触んなって!」

しかし、向かいの黒澤波瑠が立ち上がり、すかさず手を払いのける。
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