あなたの願いを叶えましょう
同じ沿線に住む私たちは、もちろん帰り道も同じ訳で、並んでつり革に捕まりながら地下鉄に揺られる。

「冨樫って、俺のことがすごく好きだったんだね」

まるで明日の天気を話すかのような気楽さで、黒澤波瑠は大胆に切り出してきた。

「いや別に、そんなんじゃないけどさ」

「じゃあ、なに?」

黒澤波留の大きな瞳に見つめられると、胸のうちを見透かされているみたいで反論出来なくなる。

あれだけ泣いて騒いでたことだし、今更否定するのも無駄だ。

「……ごめん、いきなりで迷惑だったよね」

「そんなことないよ。あの勢いにちょっと引いちゃったくらい」

真ん前に座る若い男性はずっとスマホをいじっていたが、私たちの会話を気いていたのかチラリと視線を上げる。

大学生くらいだろうか。アシンメトリーの洒落た髪型をしている。

< 228 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop