あなたの願いを叶えましょう
「あの、別にだからって、付き合いたいって思ってるんじゃないの。ただ、黒澤波瑠がベトナムに行く前に自分の気持ちをちゃんと伝えておきたかったというか…」

「なんでベトナム行く事になってんだよ」

「ベトナムじゃなくても、引っ越したら同じじゃん!」

そしたらもうこんな風に一緒に帰ることもなくなるかもしれない。

余計なことを考えているうちに、異動は酷く身近なものに思えた

みるみるうちに目に涙が溜まっていく。

「冨樫…」

黒澤波瑠は慰めるように、私の腰にそっと手を添えた。

私と黒澤波瑠は互いを見つめ合う。

その時、ふと視線を感じた。

下を見ると、前に座る大学生風の男の子ぽかんとした表情で私たちを見つめている。
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