あなたの願いを叶えましょう
「富樫が何を気にしているのか俺にはよく解らないんだけど」

レバーペーストをバケットに塗りながら黒澤波留は呑気な口調で言う。

「俺は富樫が好きだし、富樫は俺が好き、二人は両想い。俺は異動するし、社内恋愛は禁止されていない。なんか問題ある?」

そのまま黒澤波留は私の口にバケットを突っ込んだ。

確かに、問題は、ない。

私はもごもごと咀嚼する。

「お腹いっぱいになった?まどか」

黒澤波留は親指で私の唇についたパンくずを拭う。

だから、まどかって何だ?まどかって。

私が真っ赤になって縦にふると、黒澤波留は大きな目を綻ばせる。

「じゃあ、うち行こっか」

そして、まさかの一言。

「え…ええええ?!」

自分でもこんな声が出せるんだってくらい野太い声で聞き返す。

「俺は富樫が好きだし、富樫は俺が好き、なんか問題ある?」

そしてお決まりの文句で瓢々と聞き返してきた。
< 244 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop