あなたの願いを叶えましょう
午後からは、グリーンガーデンの客足も増えてきたため、イベントは午前中を上回る盛況ぶりだ。

黒澤波留はイキイキとアンケートを撒き散らすもんだから、私もお客様の受付対応で大忙しである。

「あの」

突如声を掛けられて顔を上げると、眼鏡を掛けた長身の美形が腕組みをしながら受付に座る私を見下ろしていた。

「キッズヨガの受付ですか」

私が尋ねると、いや…といって美形の男性は目を伏せた。

「ボールペン…」そして一言呟く。

私の手に持った東亜電鉄ご当地駅名ボールペンを男性はジッと凝視している。

「ああ、このボールペンですか?」

私が尋ねると男性の眼鏡の奥の瞳がギラリと光った。

「わざわざ電車通勤に切り替えて、地元の駅はおろか主要駅で途中下車してキオスク、駅中コンビニを探し回ったが、俺の住む春日町駅のものは何処にもなかった!」

テーブルに手を付いて美形は身を乗り出す。

なんか…必死だ。

そして私が持っているのはまさに春日町駅と書かれたボールペンだった。
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