あなたの願いを叶えましょう
「差し上げましょうか?」

「い、いいのか?いいのか?」

男性の目がキラキラ光る。

その時「パパ―」と言いながら可愛らしい男の子がこちらに向かって走ってきた。

「息子だ」

美形はキリっと言い放つ。

「見れば解りますが…」

私は即座に言い返す。

スラリと通った鼻筋に、涼しげな切れ長の瞳。

男性にそっくりだ。

男の子は腕にはめた腕時計型のオモチャを執拗に連打し、その度にやかましい音をジャカジャカ鳴らしていた。

「ねぇパパ、これボタン押しても変身できない」

「言ったろ?其れは気分を楽しむだけのオモチャであり、本当に変身する事は出来ない。それなのにお値段4968円とは詐欺の領域だな」

しかし、息子は親の説明など全く聞く耳を持たず相変わらず変身ボタンを押し続ける。

「息子の顔は俺に似たが、中身は完全に妻似らしい」

男性はそう言って、人差し指で眼鏡を押し上げる。
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