あなたの願いを叶えましょう
お陰さまで午後から参加者は一段と増えて、イベントは大盛況のうちに幕を閉じた。

「この後、一緒に飯でも食いに行かない?」

会場の後片付けを手伝っていると黒澤氏に声を掛けられる。

「今日は疲れたから帰る」

そこはサクっと御断りする。

これ以上この男と一緒にいたら胃が痛くなりそう。

私に回答がお気に召さないのか黒澤はスッと目を細める。

「今日は冨樫さんのお陰でアンケートも順調に回収出来たから、そのお礼にご馳走しようと思ったのに」

ご馳走、という言葉に思わず身体がピクリと反応してしまう。

「この近くに美味しい日本酒と和食が食べられるいい店があったんだけどなー。そこの若芽のシャブシャブがこれまた絶品で」

若芽のシャブシャブ…何それ…食べたことない。

「揚げたての自家製メンチにビールも最高に美味いんだよなぁ…」

私は耐え切れず黒澤波留の上着を掴んだ。

「一杯くらいなら付き合ってもいいけど」

黒澤波留はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

ああ…これではヤツの思うツボ。

だけど奢りと美味しい食事には抗えない。

だって女の子だもん。
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