あなたの願いを叶えましょう
計算高くて、腹黒くていつもスカしたこの男の弱味を握ったのだ。

バッカみたい。

たかが女のために。しかも既婚者。

「解った。ナイショね。私たち2人きりの」

私は唇に人差し指を当てて微笑み掛ける。

その代わり、と私は付け加える。

「私の願いを1つ叶えてくれる?黒澤波留」

私はカウンターに肘をつき、その整った顔を覗き込む。

「はあ?」

唐突の申し出に黒澤は素っ頓狂な声を上げて聞き返す。

思いっきり眉根を寄せて不信感満載なご様子だ。

「私ね、結婚したいの」

黒澤氏は幽霊でも見たようなギョッとした表情を浮かべる。

「バラされたくなかったら私の運命の人を探すのに協力して」

私は指先でスルリと黒澤氏の顎を撫でる。

男のくせにやたらときめ細やかな美肌が憎らしい。

黒澤波留は暫しア然として黙り込んだ後に「…びびった」と呟き再起動する。

自分が結婚を迫られると思ったのだろう。

そんなつもりは更々なかったけど、固まるほど嫌なのか。素で失礼なリアクションだ。
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