あなたの願いを叶えましょう
「ただ人がいいってだけなんだよ!あのおっさんは!!」

私はワイングラスを勢いよくテーブルに置く。

「もーさーいい加減止めといたら?冨樫」

黒澤波留はテーブルに頬杖をつき荒れる私を虚ろな目でぼんやり眺めている。

反省会と銘打って大岡台の駅前にある小洒落たワインバーで飲むことになった。

「大体原田ぶちょーはさ業務の事をなぁんもわかってないくせに二言目には業務効率化って馬鹿の一つ覚えみたいに言っててさ。だったら人と金取って来いって話しでしょう!」

再びワインをググっと煽る。

あんなに渋っていた私は勢いづいて来て、誘ってきた黒澤氏が帰りたがっているという逆転現象が何故か起こっている。

しかも反省会はいつの間にか仕事の愚痴になっていた。

「冨樫…そこだよ、そこ」

黒澤波留に指摘されくるりと後ろを振り向いた。

けど、同年代のカップルがカウンターでイチャイチャ飲んでるだけで特段変わった様子はない。

「そこって何処?」

黒澤氏は酔っ払っているのだろうか。言ってる意味が解らず私は首を傾げた。
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