あなたの願いを叶えましょう
黒澤氏の顔からは、いつもの爽やかな笑みが消えていた。

頬はほんのり赤く染まり、大きな目は眠たいのか虚ろだ。

綺麗にセットされた髪は少しだけ乱れていて、Yシャツを緩めた襟元からはスラリと長い首が覗く。

なんだかちょっと艶かしい。

「お前の事だよ!ばあか!」

…だけど口の悪さは3割増し。

「なにそれ!馬鹿って言った方が馬鹿なんだから!」

私もムキになって言い返す。

小学校低学年レベルの言い争いだ。

「冨樫よ…お前のモテナイ理由はそこだ。その隙のなさだ」

「は?すき?」

私は手酌で空いたグラスにドクドクとワインを継ぎ足しながら聞き返す。

「酒が強くて気が強い。ちょっとしたスキンシップを過剰に嫌がり、話す事も話し方も視線も態度もまぁっったく色気がない」

黒澤波留の呂律はうまく回っていない。

しかし、そんな時でも私の事は全否定。
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