聖獣王と千年の恋を
守護聖獣が守護している地域を離れるわけにはいかない。ましてや今はいつ魔獣が襲ってくるかもわからないのだ。だからこちらから出向くしかないとはいえ、ビャクレンから出たことのないメイファンは、その長い道のりに気が遠くなりそうだった。
おまけに旅の供は妻になれと迫ってくるワンリー。魔獣からは守ってくれるだろうが、別の意味で危険な気がする。
途方に暮れているメイファンの手を掴んで、ワンリーは席を立った。
「話は以上だ。まずはバイフーとソミンの加護を受けてもらうぞ」
「え、あの……」
ワンリーはメイファンを引きずるようにして、有無も言わさず出口へ向かう。それを父が後ろから引き止めた。
「お待ちください! もうひとつお聞きしたいことがあります」
立ち止まって振り返ったワンリーに、父はおそるおそる尋ねる。
「門を閉じたら、メイファンは帰って来るんですよね? たとえ、あなたの妻になったとしても、たまには帰って来られるんですよね?」
それはメイファン自身も気になっていた。自分が災いの種を抱えているなら、それを取り除くためにシェンザイに行かねばならないことは仕方ないと思う。けれど、知り合ったばかりの麒麟の妻になるつもりはないのだ。災いの種を封印できたら元の生活に戻りたい。
固唾を飲んで見つめる両親とメイファンに、ワンリーは冷たく言い放った。
「それはできない。シェンザイに入った人は人ではなくなるからだ」