聖獣王と千年の恋を


 供物台の向こうには大きな扉があり、その向こうがバイフーの部屋だとメイファンは教わっていた。祭りのときだけ、この扉は開かれる。けれど、いつも薄い布が掛けられていて、一般の人に中を見ることはできない。外観から扉の奥は結構広いことはわかった。

 今、その扉の前には大きな白い虎、バイフーが四つ足をそろえて座っている。その横に白い麒麟の青年、ソミンが立っていた。他には誰もいない。本来なら祭りの支度で人がいるはずだ。
 それを不審に思い、メイファンは振り向いて外を眺める。誰も本殿を見ている者はいない。ワンリーが察して答えた。

「こちらに注意が向かないようにソミンが結界を張ってある。邪魔が入ってはまずいからな」

 納得したメイファンはうなずいてワンリーに導かれるままバイフーの前に立つ。遠目にも大きいと思ったが、目の前に立つと見上げるその大きさが一層際だった。
 メイファンの横に立ったワンリーが、握った手を胸の高さまで掲げて告げる。

「聖獣王ワンリーの名において命ずる。ビャクレンの守護聖獣バイフー、及び四聖獣ソミンよ。この娘メイファンに加護を与えよ」

 それに呼応してバイフーとソミンの体が白い光に包まれた。光は徐々に膨れ上がり、やがてメイファンの体も包み込む。その眩しさに目を閉じて、体の内側がほんのりと温かくなったと思ったら、今度は徐々に薄れていった。

 ゆっくりと目を開くと、あたりは元の通りに戻っている。特に何かが変わったような気はしなくて、メイファンは尋ねるようにワンリーを見上げた。ワンリーが頷いて微笑む。

「ビャクレンの加護は完了だ。次はシンシュのヂュチュエとエンジュだ」

 ワンリーはバイフーとソミンにビャクレンの守護を指示し、メイファンの手を引いて聖獣殿を後にした。

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