聖獣王と千年の恋を
6.魔獣王と究極の選択
ガーランと一緒に睡蓮を眺めているところへ、武官がひとり血相を変えてやってきた。
「ガーラン殿ーっ! 帝がお呼びです!」
それを聞いてガーランはため息と共に誰にともなくつぶやく。
「やれやれ。またか」
そして武官に告げた。
「すぐに行く。先に行っててくれ」
「はっ!」
武官は返事をして踵を返した。
それを見送って、ガーランはメイファンに苦笑を向ける。
「申し訳ありません。こちらからお誘いしておきながら、戻らなくてはなりません」
「いえ。十分気晴らしになりました」
「そう言っていただけると助かります。また別の機会にゆっくりお話をしましょう」
「……機会があればぜひ」
申し訳ないとは思うけど、ガーランはやっぱりどこか怖くて苦手だ。奥様に似ているという自分が、少しは慰めになれればと思わなくもないけど、できればあまりそばにはいたくない。ついつい、曖昧な返事をしてしまう。
それでもガーランは嬉しそうににっこり笑って、メイファンを庵まで送り届けたあと、宮殿の方へ立ち去った。少し胸が痛むと同時に、それを上回る安堵の気持ちにホッと息をつく。そして気になるのはやはりワンリーのことだった。
今日こそは取り調べが行われるのだろうか。
ガーランの言葉が伝わっているなら、今日中に釈放されるのではないだろうか。そう思うと、そわそわしてきた。