聖獣王と千年の恋を
メイファンの目の前には薄く金色の幕が張っているように見える。これが結界だろうか。
そういえばガーランはどうしているだろうと周りを見渡してみるが、どこにもいない。たとえ近くでメイファンを奪う機会を窺っているとしても、ワンリーの結界があれば手出しできないということらしい。
それなら自分がおとなしくしている方がワンリーは存分に戦える。メイファンは笑顔で頷いた。
「はい。ワンリー様、お気をつけて」
向き直ったワンリーに、タオウーはいきなり襲いかかってきた。
「おまえのような優男(やさおとこ)、本性に戻らずとも人の姿で十分だ!」
振り下ろされた大剣をワンリーは雷聖剣で受け止める。金属がぶつかり軋むような音に、メイファンは思わず身をすくめた。
「聖獣王も見くびられたものだな」
余裕の笑みを浮かべてワンリーは大剣を押し戻す。後ろに突き飛ばされたタオウーはたたらを踏んだ。
大きなタオウーの半分しかなさそうな細い体のいったいどこからそんな力が湧いてくるのか、メイファンは驚きに目を見張る。
すかさず間合いに飛び込んだワンリーが今度は剣を振り下ろした。すんでのところで身を躱し、タオウーは楽しそうに笑う。
「意外と楽しめそうだな」
そう言って再び大剣を振り下ろした。受け止めたワンリーの雷聖剣に向かって笑い声を発しながら、何度も剣を打ちつける。
タオウーが振りかぶったわずかの隙に、ワンリーは身を躱し間合いを取った。そして素早く雷聖剣を振り下ろす。剣先からタオウーめがけて雷がほとばしった。
タオウーはおどけたように笑いながら、それをひょいとよけて、すぐさま大剣を振り下ろす。またしてもガシガシと剣を打ちつけるのを見ながら、メイファンはふと不思議に思った。
どうして体を攻撃しないのだろう。タオウーは剣を打ちつけるばかりで他の攻撃をしない。まるで雷聖剣を叩くことが目的のように。
それに気付いてメイファンは叫んだ。
「ワンリー様! 剣を合わせてはダメです。その人は雷聖剣を折るつもりです!」
「なに!?」