聖獣王と千年の恋を
儀式が終わって、ジャオダンは扉の奥へシェンウーを戻して扉を閉じる。そしてワンリーに尋ねた。
「それで、テンセイではなにがあったんですか?」
「これを見てくれ」
そう言ってワンリーは雷聖剣を呼び寄せる。手の中には先の折れた根本部分が、先端部分は足元に音を立てて落ちてきた。ジャオダンは床に転がった雷聖剣の先端を拾い上げて驚愕に目を見開く。
「これはいったい……」
「俺もこんなことは初めてだ」
そしてワンリーは皆を促して床に座り、テンセイでの出来事をジャオダンに話した。話を聞いてジャオダンは小刻みに頷く。
「なるほどなるほど。それは色々と災難でしたなぁ」
「なにかわかるか?」
「はい。おそらくですが、その魔獣が持っていた剣は黒龍の角から鍛えたものでしょう。私が知る限りで雷聖剣より堅いものはそれしかありません」
「黒龍剣か。まいったな……」
ふたりは雷聖剣を見つめて、途方に暮れたように黙り込んでしまった。いまひとつ状況を飲み込めないメイファンは、色々聞いてみたくてうずうずする。まだしゃべってはいけないのだろうかと、ワンリーの袖を引いた。
「ん? どうした?」
不思議そうに見つめるワンリーに口を開きながら目で訴えてみる。どうやら察してもらえたみたいで、ワンリーは笑いながら許可してくれた。
「あぁ、すまない。もうしゃべっていいぞ。結界は張ってあるし、人もいなかったしな」
それを聞いてホッとしながら、メイファンは早速尋ねる。
「雷聖剣ってなにでできてるんですか?」
「金の麒麟の角だ」
「金の麒麟ってワンリー様ですか?」
「俺ではない。先代の聖獣王だ」
「え?」
聖獣の王は大昔からずっとワンリーだと思っていた。まさか代替わりしているとは。思わず大声を張り上げる。