泉の恋
右手に学生カバン、左手に学校指定の通学バック。
それをつかんだまま、顔からまともに倒れこむ。

ああ、我ながら情けない右足。

それを見た周りの学生たちから、どっと笑いが沸く。

「げーっ!」
「バーカ!」
「どんくせーなあ、ドンガメ子!」

嘲りの声が倒れた私の上をどんどん通り過ぎて行く。
あまりの痛みでしばらく立ち上がれない。

ようやく痛みをこらえながら両手をつき、上半身を起こしたとき、

キンコーン、

校舎から予鈴が聞こえ始めた。

登校する生徒達の歩くスピードが一気に上がる。

「やべ!今日の立ち番、鬼ハナだぜ!」
と、誰かが舌打ちした。
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