お嬢様 × 御曹司
ただ本音を言っただけなのに、彼らはどうも諦めがつかなくなったらしい。


こんな可愛くもないやつに話しかけて何が楽しいんだか。


よくわからないけど迷惑です!


「いいから行くよ、」
「ついてくればたのしーって。」
「大丈夫、大丈夫。」


そう言って強制的に引っ張られていく。


「あの、だから」


私は大好きなやつと待ち合わせしてるんだ!


だから解放しやがれ!


「離してください!」


それでも聞こえないふりをする彼ら。


力の差は圧倒的で、振り払える気がしない。


「どうせ、男とでも待ち合わせしてたんでしょう?」


私はますますイライラを募らせる。


わかってんならさっさと離せ!


「でも、俺たちの目は騙せない。」
「彼氏じゃないんだろう?」


…確かに違うけど、私からしたら最もそれに近い人なのに。


願わくばそうなってほしい。


それを馬鹿にされたら誰だって頭にくる。


けれど、男子3人に対して女子1人の力なんてライオンとアリンコほどの力の差があるわよ。


「彼氏じゃないなら、あんなやつほっといて、あそぼ…」


-パンッ
-パンッ
-パンッ


三回音がなったかと思うと、私の両腕と肩を掴んでいた6本の手が離れた。


すると、今度は優しく私の手をつかんで引っ張る誰かの手。


私は、すっぽりとその胸の中に収まった。


片手はつながれ、片方の手で私の腰に手を回し、抱き締めるような体勢で私を守ってくれてる。


そのぬくもりから、その人が誰なのか、見なくてもわかる。


「彼氏じゃなくて悪かったな。」


私はまだ聞いたことのないような低い声が頭上から聞こえた。


彼もイライラしてるのが声でわかる。


その威圧的なオーラに怖気ずいたのか、ただ単に男が来るとまずいことでもあるのか、彼らは足を一歩引き、


「なんだよ、男かよ。」
「ぶがわりーな。」
「逃げるが勝ち!」


「は?」


私も彼もポカンとする間に、諦めの早いナンパ三人組は逃げていった。


「…ぇ」


なにがしたかったの⁈


イライラなんか一瞬で吹き飛んで、呆れに変わったわ!


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