お嬢様 × 御曹司
歩きながら、すれ違ったメイドにジュースを渡す。


無線ではすでに誰から渡されたか全執事、メイドに連絡が入っている。


執事やメイドは見にくいが耳に無線機をつけており、それで情報交換をしてるそうだ。


私は物を受け取ってはいけない、受け取っていいものは飲み物の入ったグラスと食べ物の乗った皿。


しかし、飲んではいけない、食べてはいけない。


毒が入っている危険もあるので、必ずメイド・執事のどちらかに渡すこと。


グラスや皿に毒が付いている可能性もあるが、私は手袋をしているので問題がないらしい。


ましてや会社の関係者が大勢いる中で私が食べ物を口に運ぶことはありえない。


「聖夜様、ごきげんよう。」


「ごきげんよう、青木様。」


私はドレススカートを軽く持って、足を一歩下げて軽く一礼する。


この人は、堅苦しい挨拶ではなく、軽い挨拶がいいとかなり前に言われてからというもの、青木様にだけはこの挨拶をしている。


今年で86歳になられたおじいさんだけど、見た目も動きもめちゃめちゃ若い。


私が小さな時から、よく気にかけてくれる人。


だから、私は勝手に信頼できる人だと思っている。


「誕生日、おめでとうございます。プレゼントはもう渡してありますから。今回もドレスにさせていただきました。」


「ありがとうございます。とても嬉しいです。後ほど拝見させていただきます!」


「はい。それではまた。」


「ごきげんよう。」


会話も短く、直接ものを渡したりもしない。


マナーをここまで綺麗に守ってくれる人は、青木様以外にいない。


やっぱり、そういうマナーを守れる人って信頼したくなるもんだよね。


「私も気をつけなくちゃ。」
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