お嬢様 × 御曹司
「はな〜?」


チリンチリンとベルを鳴らす。


「お呼びでしょうか?」


あの後むかったのはゆうちゃんの家。


恋人つなぎで店に入った私たちを見て、ゆうちゃんだけでなくゆうちゃんのお母さんまでもが大喜び。


何も注文していないのにせっせと料理を出してくださった。


「全部勇輝の試作品だから、気にせず食べてね?」と言ってくれたけど、クオリティの高さからするに、わざわざを私たちのため作ってくれたことがわかって、嬉しいかった。


そんなこんなで1日満喫し私は家に帰ったのである。


そして今、私は花を呼び出している。


他でもない、将来について話すために。


「どうなさいました?」


なかなか私が話し出さないものだから、花はせっせとお菓子と紅茶を用意した。


紅茶を淹れ終わるのを待って、質問する。


「花の将来の夢はなんだった?」


「メイドでございます。」


うわぁ、即答。


いいな、夢があるって。


私も即答できるようにならないかな。


「花、座っていいよ?」


ソファが二つあって、机をソファーで囲むようになっているリビングで、花は私の後ろに立っていた。


いつもの立ち位置なので指摘しないほうがいいかなとは思ってたんだけど、さすがに話しにくいんだよね。


それに、今はメイドの花ではなく友達の花になって欲しかったから。


「失礼します。」


さすが、花には何も言わなくても私の考えが伝わるから嬉しい。


さて、話はここからが本題。


「家がそういう家系だったから?」


花の家は代々メイド一家だから。


かなり珍しい家系だけどね。


花は少し考えた。


そうしてから、思い出すように話してくれる。


「いいえ、違います。私は、小さい時は自分の家のしきたりが嫌で嫌で仕方ありませんでした。」


「しきたり?」


そうたずねると、花は恥ずかしそうに話し出す。


「はい。小学校高学年になると姉様や母様の後をついていって、メイドの仕事を間近で見るのです。」


確かにこの間、数日だけ花の近くに小学5年生の女の子がひっつきあるっていた。


それはしきたりだったのか。


「でも、花はそれが嫌だったんでしょ?」


「もちろん。メイドになんてなりたくなかったし、みにいくのも嫌でした。ですが、ある時母様に無理やり引っ張られて仕事を見に行ったのです。その時の母様の仕事ぶりと、主人の方の喜ぶ笑顔を見て、考えが変わりました。」


「その主人って?」


「聖夜様のお母様でございます。」


あー、確かに母さんのメイドの中で一番信頼できるし頼りになるのは「花咲」っていうメイドなのよって母さんいつも言ってたわ。
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