お嬢様 × 御曹司
「それで、花はこの世界に入ろうと思ったんだ。」


私はようやく紅茶をすする。


夜になって冷えてきたから、中から温まるのは得策でしょ?

しかも、花の淹れる紅茶は世界一美味しいって私は思ってる。


「はい。家系だったから無理やり、ということはありません。ですが、メイドの一族の家系ではなかったら、私がメイドになろうと思うきっかけもなかったわけですから、微妙なところですね。」


そう言って立ち上がり、カーテンを閉める花。


花は小学生の時から夢があったんだ。


そして、夢を見つける時期も、内容も人それぞれ。


私が焦る必要はないのかもしれない。


えーっと、確か兄さんは会社の見学で出かけたばかり…他の執事さんもいない。


よし。


だったらリビングでいっても大丈夫かな?


「花?」


「はい?」


大きな窓のため、カーテンを閉めるのに今までかかっていた花。


続いては暖房を入れようとしているところだった。


私はまた一口紅茶を飲んでから呟くように話しかける。


「大道寺武士と結婚を前提におつきあいさせていただくことになりました。」


最後まで聞いていた花は、穏やかな顔で頷いている。


まだちゃんと理解してないな!


だったら何か聞かれる前に逃げるが勝ち!


あ、今の私ナンパ三人組みたいな考え方だ。


「今日はオムライスがいいなぁ〜!」


そう言いながら立ち上がり全速力で階段を駆け上がる。


もちろん、紅茶を飲みおわしてから。


「え?」


花はやっと言葉の意味を理解したようで。


私が部屋に入ったと同時にものすごい足音と声が響いてきた。


「説明しなさい!聖夜!」


これは、友達の花で問い詰められることが確定したな。
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