お嬢様 × 御曹司
桜公園の丘には、他に人がいなかった。


てっぺんまで登って、草の上に座る。


椅子にしか座ったことなかったからこれもまた初めての体験。


結構気持ちがいい。


「誠様イケメンだった。」


座った途端に出た言葉がそれかよ!と突っ込みたくなるけど、初めて見た人は大体そういうから気にしないことにする。


確かに、兄さんはイケメンの部類。


だけど、私がかっこいいと思うのはたけくんなんだから、そこは、ちゃんとわかってよね?


「隣にいた人って、誰?」


「兄さんの彼女になる人。」


「…?」


私のあいまいな供述に首をかしげるたけくん。


でも本当のこと。


この間煽っておいたから、今日あたり告白でもするだろう。


なんたって、ベストタイミングなんだからね。


「私たちまでにはならないと思うけど、それなりにいいカップルにはなると思うよ。」


「なんだよそれ、俺町がバカップル見たいだろ?」


軽く私の頭を小突く彼。


その顔は照れてる顔だ。


「バカップルじゃなかったら、なんなのさ。」


「激甘カップル」


「変わらないわ!」


そう言って笑いあう。


まだ花火が始まってないから、月の方が目立つ。


お互いに何も言わず空を見上げる。


思い出したように、たけくんがミルクティーを渡す。


たけくんが持ってたのはお茶。


…渋!っていうか似合う!


と思ったけど口に出さない。


今はそんな雰囲気じゃないし、そのたけくんがいいと思うから。


座ってもなお、片手は恋人つなぎのまま。


2人とも黙って、花火が上がるのを待つ。


どんな花が夜空に咲くのか、待ち遠しい。


-ヒュ〜


という音が聞こえたと思ったら、


-ババーン‼︎


という大きな音を立てながら、日の花が空に輝く。


想像以上の大きさに、胸の高鳴り間を感じる。


繋いだ手に力が入ったのは、お互い様。


「綺麗だね。」


「あぁ。どうして今まで見なかったんだろうな。」


確かにそうだ。


こんな綺麗なものを見ずに過ごしていたなんて、勿体なさすぎる。


「来年も2人でみようね、花火。」


「そうだな〜。でも、来年は受験生だけど。」


「げ、嫌なこと言わないでよ…」


そんな会話をしていても、夜空にはたくさんの花火が打ちあがっている。


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