お嬢様 × 御曹司
「今日、聖夜が可愛すぎて困った。」


空を見上げながらつぶやいたたけくんを思わずみる。


一度だけこちらを見て笑ったかと思うと、恥ずかしいのかまた空を見上げてしまう。


「浴衣似合いすぎだろ?」


「ずるい…」


私を褒めたりするとき、たけくんはいつもと違って男の子っぽい言葉を使うんだから。


いつも優しいたけくんからのギャップは、私の心を乱す。


「何がずるいんだよ。」


「その言葉遣いだよ!」


その反論を聞いて、たけくんは楽しそう。


「ふ〜ん」


なによ、その企みの感じられる返事は!


…あーあ、言わなきゃよかった。


「でも、本当に似合ってるし、可愛すぎて聖夜の方がずるいよ。」


ほら、そう言いながら元の君に戻る。


からかいあいで一枚上手なのは、実を言うと、たけくんの方なんだ。


私は諦めて、たけくんにもたれかかる。


たけくんも私に体重を預けてくれる。


2人で支えあいながら寄り添う。


「私の方が先に、たけくんにかっこいいって言いたかった。」


「ありがとう。」


そう言いながら、繋いでいない方の手で私の頭を撫でてくれる。


たけくんの前だと、私は甘えん坊になる。


それでいいんだよって、たけくんは言ってくれるけど、他の人に見られたら、私顔あげられなくなる。


「好きだよ。」


「俺も好き。」


2時間ほどの間に途切れることなく花火が打ちあがった。


私とたけくんは終始2人で花火を満喫。


帰りはたけくんが送ってくれるというので、お言葉に甘えて送ってもらうことにした。


私甘えてばっかりだなぁ。


帰り道、軽くなってしまった綿あめの袋が少し寂しい。


カランカランと、私たちの歩く音だけが響いてる。


「楽しかったね、聖夜。」


「時間があるときは、また…デートに来よう。」


少し恥ずかしかったけど、デートっていうと、なんかいいな。


ただ出かけるんじゃなくて、特別だって思える。


「うん。何回も。」


そう言っているうちに、家に着いてしまった。


玄関の前で立ち止まる。


たけくんが、名残惜しそうに私を見つめる。


私も、繋いだ手を離さない。


でも、もう夜も遅いし、これ以上たけくんが帰るの遅くなるのは困る。


たけくんは言いにくいだろうし、私から言わないとな。


「たけくん。」


「ん?」


私は家を指差す、つられて、たけくんは私の指差す方向を見る。


-チュッ


私がたけくんにやられたように、不意打ちでたけくんのほっぺたにキスをする。


それと同時に手を離して玄関のドアを開けた。


「ま、また今度!」


最後にチラッとだけ、たけくんを見る。


「送ってくれて、ありがと!」


そう言って扉を閉める。


顔も暑くて、多分真っ赤。


「自分からなんてするんじゃなかった。」





残されたたけくんがどうしたか?


後から聞いたんだけど、たけくんはあのあと少し固まって。


「ズルすぎるよなぁ////////」


と言ってしゃがみこんで顔を手で覆ったらしい。


たけくんの胸の高鳴りは、これまでで一番だったとか。
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