お嬢様 × 御曹司
「えー!じゃあ花さんあの有名な名門校に通ってるんですか!」


机を叩いて大きく身を乗り出すゆうちゃん。


苦笑い気味に花は答える。


「一応。休みも多いから今年は留年覚悟だったんだけど、それじゃ聖夜に会わせる顔がないから…テストの点数でごまかしてなんとか。」


そのごも花に質問の嵐をあびせる。


いつの間にか私たちのテーブルに飲み物とお昼ご飯を持ってきて、相席状態。


別に構わないんだけど、見つかったら絶対ゆうちゃんのお母さんに怒られるわ、これ。


そうは思うんだけど、花は花で年の近い子が話し相手になってくれて嬉しそうだし、別にいいか。


「聖夜もかなり有名なお嬢様学校だよね?」


私は口の中の食べ物を飲み込んでから答えた。


「まあ、ね。みんなの考えてるようないいところじゃないよ?」


「こら、聖夜。」


だって〜と花に反論。


私友達学校にいないし、学校楽しいと思ったことなんてないもの。


「えーそんなことないと思うよ?だってうちの中学、CとDクラスはエアコンついてないもん。私Cクラスだから扇風機だけなんだよ?」


その言葉に私、花までもが絶句。


この暑い夏の日にエアコンがないなんて考えたこともなかった。


そうか、普通公立の中学校はエアコンがついていないのか。


「ほらー、その感覚がお嬢様なんだって。花さんも以外と。」


「う、うるさい!」


そうは言ったものの、金銭感覚やその他の感覚も他より少しずれていることは知っている。


普通は人それぞれ違くていいと思うんだけど、私の場合その普通が大幅にずれているのが問題アリってわけで。


そのため話がかみ合わないことも…。


「勇輝ちゃんは、高校どこにするの?」


「私ですか?パティシエの専門校です。ここの県に唯一ある専門校が近くにあって、そこに行きます。私立校なんですけど、筆記試験だけじゃなくて調理の試験もあるもんで。そっちのが大変です。」


はちみつサイダーを一気に飲みおわして、立ち上がるゆうちゃん。


そろそろばれそうだと思ったから、何気なく戻るつもりだろう。


自分で食べていた食器類を慣れた手つきで片付けて、


「それでは、ごゆっくりお過ごしください。」


深々と頭を下げてキッチンに戻っていった。


「何してたのよ〜。」というゆうちゃんのお母さんの怒った声は、聞こえなかったことにしよう。


「次はどこか行きたいところあるの?」


随分といい顔になった花。


これまでの疲れが癒せてたらいいんだけど…。


花に聞かれて、とっさに答える。


「近くのお店で、雑貨屋さんに。よく行くお店で、店長さんとも仲良くさせてもらってるんだ。」


すると、今まで優しく笑っていた花の顔がキリッとする。


あーあ、これはメイドの顔だ。


「だったら、きちんと挨拶しなくてはいけませんね。」


そう言ってメガネをカチャリ。


なんというか、花らしい。
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