お嬢様 × 御曹司
次の日の朝。


出かける寸前でLINEを思い出した。


「いっけない!」


そう大声を出すと同時にチャイムがなった。


花が対応している声がする。


私は急いで打ってそのままカバンの奥に入れて一階に降りていった。


[男の子だよ。]


それだけ打つのが精一杯で、カバンにスマホを入れてしまう。


玄関に迎えに来てくれていた彼に挨拶をする。


「おはよう。」


「おはよう。」


彼はいつも幸せそうに笑う。


何が幸せなのかわからないけど。


でも、断然たけくんの方が明るくていい笑顔。


失礼かもしれないけど、ちょっぴり怖いんだよね〜彼の笑顔。


家を出ると二人で歩きだした。


そう。


遊園地はうちからあるって行ける距離なんだ。


「女の子の友達たちは?」


一緒にうちまで来てくれる予定だったのに…1人もいないなんて。


彼は苦笑いしたように見えたけど、すぐに真顔になって報告してくれた。


「みんなお腹壊してこれないんだって。1週間前に消費期限が切れれてるヨーグルトを全員で食べたらしい。」


お、おぉ。


それはそれはお気の毒に。


そっかぁ、つまり女の子はこないんだ。


そうわかるとなんだか残念な気持ちになってきた。


女の子と友達になれればと思ったから、たけくんとのデートを断ってまでついてきたのに。


するとその手を彼がとって、顔を真っ赤にしながら走る。


「二人でも、楽しもうね!」


その無邪気な笑顔も、私にはかわいそうな笑顔にしか見えなかった。
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