お嬢様 × 御曹司
「ご…ハァ…ごきげんよう、聖夜様。…ハァ…こんな姿で、申し訳ありません。…ハァハァ…」


「ご、ごきげんよう。」


さっき話していた大道寺タケシにあった私。


てか、なんで汗だくなの⁈ネクタイどうしたの⁈なんで息荒いの⁈


といいますか、突っ込みどころ多すぎない⁈


「ハァハァ…すみません!…ハァハァ…少々、、、失礼します。」


そう言って後ろを向いて、5回ぐらい深呼吸する彼。


ワイシャツで汗をぬぐって、ネクタイを締めた。


その仕草だけで呼吸を整え、くるっと振り返ってまっすぐに私と目線を合わせる。


そして、綺麗に90度のお辞儀を保ち、


「この度は、聖夜様の誕生祭に遅れてしまい、申し訳ありませんでした!なんと言っていいか…本当に申し訳ありません!」


そう大声で言って小刻みに震えている彼。


周りの目線が一気に集まった。


でも、私は周りの目線なんて気にしないで声をかける。


「頭を上げてください、交通事故の渋滞ではどうにもならないでしょう。それを言い訳にせず謝ってくれたこと、本当に嬉しく思います。ですから、あなたが気に病むことではありません。頭を上げてください。」


多分、彼は大道寺家の名に泥を塗ってしまったと思ったのだろう。


私だって、日野原家の名に泥を塗るようなことをしたくはない。


それは、私たち御曹司と呼ばれるもの特有の思いだ。


恐る恐る顔を上げる彼が面白くて、私はつい吹き出しそうになるのをこらえた。


「大丈夫ですよ、大道寺家が私の誕生日を祝ってくれたことを嬉しく思います。」


大声で言って、周りに私の考えを嫌でも聞かせる。


悪い大人は、なによりも他の会社の失敗を好むから。


「私と同い年なのに、一人で来てくれたんでしょ?ありがと。」


ただ単に彼を褒めてあげたかっただけだから、小声で言った。


さっき、陸から詳しく聞いた話だと、渋滞にはまったところから走っていてくれたらしい。


時間だと1時間ぶっとうしで走ってたことになる、と陸が教えてくれた。


そこまでして(わたしのためでないにせよ)自分のうちの名に恥じぬ行いをしようとした彼が素晴らしいと思った。


同じ立場の人間としても憧れる行動だ。


「ありがとうございます。」


わたしの考えていることが全て伝わったとでも言うように笑い、彼はまた、頭を下げた。
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