お嬢様 × 御曹司

あれ？目の前がくらむ。


おかしいな、息が吸えない。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


やばい、きた。


頭がぼーっとする、苦しい。


「聖夜、聖夜！」


たけくんも過呼吸に気がついたのか、持っていた袋を私の口に当てる。


それが過呼吸の時の対応だということも知っている。


「聖夜、ちゃんと息吸って！」


だけど…


私は袋を受け取らずに首を振る。


わかんない、わかんないよ。


いつも普通にしてるはずの息の吸い方がわからない。


どうしよう、どうしよう！


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


全く息が吸えなくなる。


苦しい。


苦しいよたけくん！


「聖夜！」


たけくんが私を抱きしめた。


私は息をするのを忘れた。


「俺の呼吸に合わせて」


耳元で、たけくんの呼吸が聞こえる。


すぐ目の前で、たけくんの鼓動が聞こえる。


私は一生懸命たけくんの呼吸に自分の呼吸を合わせた。


「ふー。ふー。」


そう言いながら、たけくんはずっと、私を抱きしめていてくれた。


だんだんと気持ちの方が先に落ち着いてきて、呼吸も元に戻り始めた。


落ち着くと、すぐ近くの自動販売機でたけくんが水を買ってきてくれた。


それを飲んで、完全に元に戻った。


「声、出そう？」


「うん。大丈夫。ごめん。」


私は本当に、いろいろと申し訳なくてたけくんに謝った。


ちゃんと誤解を解かなくちゃいけない。


だって、本気で怒ってる相手に、ここまで優しくしてくれたんだから。