お嬢様 × 御曹司
「本当は、2人きりなんかじゃなかったの。女の子が来るはずだった。なのに急に来られなくなったって。」


まずはそこから話しだした。


私がまた過呼吸になってしまうことを恐れたのか、たけくんが両手を握っていてくれる。


だから、話しやすかった。


彼は怒っている、けれど、私を慰めてくれている。


私はゆっくりと確実に言葉を紡ぐ。


「でも、せっかく誘ってくれたし、学校で唯一、話しかけてくれる人だったから、断るにしても申し訳なくて。それに、女子がいないからって理由で断るのも気が引けて。」


たけくんは、何も言わずにまっすぐ私を見て聞いてくれる。


大丈夫、大丈夫。


私は自分を落ち着かせた。


「だから一緒に来た。けど全然楽しくなかった。だけど誘ってくれたんだし盛り上げなくちゃと思って…そしたらさっき観覧車に誘われて。」


無理やり腕を引っ張られて乗せられそうになり、一度断ったことも伝えた。


それが、どれだけ嫌な誘いだったかも。


「本当に嫌だったから、もう耐えられなくなって逃げようとしたの。そしたら…思いっきり引っ張られて、嫌だって言ってるのに乗せられそうになった。」


そこをたけくんが助けてくれて、その後はたけくんの知っての通り。


そう話した。


たけくんは苦いものを噛み潰したような顔で一瞬固まる。


少しするとたけくんは申し訳なさそうに切り出した。


「ごめん、俺の早とちりで過呼吸にさせちゃって。」


あ、やっぱり勘違いしてる。


たけくんに問い詰められたからって過呼吸になったりしないもの、私。


「違うよたけくん。過呼吸は彼のせいだから。怖かったの。無理やり乗せられそうになったのが。」


逆にたけくんが助けてくれて、安心したし。


そんなに気にすることないのに。


「いいの。勘違いでも怒らせちゃうようなことしたのは、私だから。」


「でも…」


そのたけくんの優しさに、私は自然と表情が穏やかになる。


「それに…」
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