お嬢様 × 御曹司
そう言って手を握り返すと、しぶしぶ目線を合わせてくれた。


私は笑顔でこういったんだ。


「今までたけくんが私のこと怒ったことなかったから、嬉しかった。だって、私のことを大切に思ってないと、怒ってくれないでしょう?」


喧嘩もしないほうがいいと思ってたけど、意見の食い違いをそのままにしておくほうが怖いんだって、今わかった。


言いたいこと言って、喧嘩もする。


もちろんどちらかがどちらかに怒られる。


でもその後に、仲直りして、反省して、また仲良くすればいいんだ。


それは、本当に相手を大切に想っていればできること。


「っ、」


何か言いたそうだけど、言葉に詰まるたけくん。


取り乱してしまったのが、恥ずかしかったみたい。


だって、顔が真っ赤だもの。


「ちょっぴり怖かったけど。」


おふざけでそう付け足してみる。


ペロッと舌を出しておばかちゃんポーズ。


「ちょっ、」


-グィッ


たけくんは何も言わずに、私を抱きしめた。


「はーーー…」


そして、大きなため息をひとつ。


その声で、どれだけ心配をかけたのかが身にしみてわかった。


私は、何も言えなくなってしまった。


数分、何も話さずそのままだった。


先に口を開いたのは、たけくんの方。


「男の子と出かけるっていうから…。」


言いづらいことでもあるのかな?


慎重に言葉を選んでいる感じ。


すると、次は何かを吹っ切るように小さく息を吐き出した。


そして、早口で話し出す。


「男の子と出かけるってきいて、ヤキモチやいた。俺とのデート断ってまで?って自分勝手な意見で。どうしても嫌でここまできたら観覧車に乗り込むところだったから、本能を抑えきれなくて…。ふたりきりだとは思わなかったからちゃんと状況も知らないのに動揺して聖夜に当たった。」


最後に「悪い。」とつぶやいて、もう一度私を強く抱きしめた。
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