お嬢様 × 御曹司
だから、私も周りをよく見れてなかった。


近づいてくる彼に気がつかないなんて失態、あれ以来ないだろう。


「…よう。ごきげんよう、聖夜様。」


「うわぁ!」


驚いてグラスを落としそうになったのを慌てて彼が受け止める。


私の目の前には、誕生祭で出会った、茶髪の髪を少し伸ばしていて、身長が高く、キリッとした顔立ちをしている彼。


「驚かせるつもりはなかったのですが…」


困った顔…というより戸惑った顔をする彼。


そりゃ、話しかけて「うわぁ!」とか言われたら誰だって戸惑うよね。


「ご、ごめんなさい!」


私も突然の彼の登場に心臓のばくばくが抑えられない。


今までこんなこと一度もなかったらこら対処法がわからず私もあたふたしてしまう。


「私のこと、覚えていらっしゃいますか?」


それでも優しく話しかけてくれる彼ってどれだけ心が広いんだろう。


「は、ははははい!大道寺家次男の武士様で、ですよね!」


思いっきり声裏返りましたぁ!


なにやってるのよもう、私のバカバカバカバカ!


内心はこんなだけど、表情だけは平然を保つ。


「よかった。嬉しいです。」


あぁ、この人の笑い方には裏も表もない。


この世界では珍しい笑い方をするんだな。


私は心の中で大きく深呼吸。


うん、少し落ち着いてきた。


あ。


そこでやっと私はあることに気がつき、こみ上げた笑いを抑えきれず吹きだしてしまった。


「ふふふふふ。」


「の、聖夜様?」


なんで私達、同い年なのに敬語まで使って、名前に様までつけてるんだろう?


当たり前と言ったら当たり前の疑問だけど、今更気がついた自分自身にも笑ってしまう。
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