お嬢様 × 御曹司
「私達、同い年なのに、様付けも敬語もしてるなんておかしい。」


ふふふって笑っちゃう。


「で、ですが身分上…」


彼は、ほんと真面目。


間に受けてあたふたしちゃうところも結構私に似てる。


あなたのお兄さんなら絶対テキトーに受け流して次の話題にしちゃうのにね。


あなたは本当に丁寧な人だ。


だったら私から敬語も様付けもやめよう。


「いいじゃん。どうせこの世界で同い年なんて私たちぐらいだもん。素の方が何かと楽だし。」


そう言って落としそうになって、彼が持っていてくれたグラスを受け取り、私は彼の目をまっすぐ見る。


よく見ないとわからないけど、彼の目は二重で、おちゃめって言葉がよく当てはまる。


もちろん総合するとかっこいい。


「じゃあ、お言葉に甘えて。」


うん、飲み込みも早い。


嫌いじゃないよ、そういう人。


「じゃあ、友達から始めましょうってことで。」


私は近くに空のグラスを机に置き、置いてあったジュースを2つとって彼に一つ渡した。


チンッといい音を鳴らして乾杯する。


私は緊張で喉が渇いていたみたいだから、すぐに飲んでしまったけど、彼は飲まない。


…あぁ、そっか。


彼も、兄さんと同じ跡取り息子という立場のお坊っちゃまなんだ。


だから私は手を差し出した。


「他人からもらったもの、飲んじゃいけないもんね。ごめ…」


グラスを返してもらうつもりだったのに、話してる途中で彼は一気にジュースを飲み干した。


意地悪な笑みを浮かべながら、私と目線を合わせていう。


「もらうよ。君が俺に毒を盛る理由もないだろうしね。」


あ、私から俺に変わった。


なんか、ちょっと優越感。


それに、さっきの行動も男前。


普通、まだ2回しか会ったことのない信頼できない相手からもらったものなんて飲めない。


もちろんそれが自分より上の身分・会社だとしても。


それなのにすんなり飲んだ彼は、よほど肝が据わってる。


恐るべし大道寺家次男坊!


「あのさ、なんて呼べばいいかな?君のこと…」


唐突な質問に戸惑う私。


あんなにキザなセリフは目を見て言えるくせに、なぜ、その言葉は目を泳がせながら言うの?


不思議な人だなぁ、ほんとに。


「なんとでも読んで。名前の呼び捨てでもいいし、ニックネームでも。」


「うーん…困るなぁ。」


困るって言われても…。


「あ、俺のことはなんとでも読んでいいから!」


自分を指差してはしゃぐ彼。


私もつられて笑顔になってしまう。


彼は表情がコロコロ変わるし、なんといっても見ていて飽きない、話していて退屈しない。


まだ話してほんの15分だけど、私はそう思った。


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