お嬢様 × 御曹司
呼び方を考えてみようかな。


武士くん…はなんとなく堅苦しいような。


うーん…確かになんとでも読んでって難しいし、相手としては困るね。


できれば彼には呼び捨てで呼んでもらいたいんだけど…


「ん?なに?」


バッ!


無意識に彼の顔をガン見していたみたい。


思いっきり顔を背けてしまった、失敗失敗。


そんなこんなで呼び方は決まらず、彼も考えているようだから話しかけることもできずに困っていると、また唐突に彼が口を開いた。


「今日は髪おろしてるね。イヤリングは誕生祭の時と同じでしょ?誕生祭で誰からのもらいものか聞いてもいい?」



「っ、」


私は、一瞬でこの人がただの御曹司でないことを察した。


一度しか見ていないはずの私のあの時身につけていたものを覚えており、髪型も覚えている。


それってなかなかできないし、2回しか会ってなくて、その2回たまたましていたかと知れないイヤリングをどうして誕生祭のもらいものだとわかったのか…


偶然にしても、かなりのかんの鋭さだよね。


「兄さんと母さんから。13歳になった誕生祝いでもらったんだ。どうしてわかったの?」


流れでそれとなく聞いてみる。


彼は人差し指を立てて楽しそうに解説しだす。


「あの誕生祭の日、俺に会う前君は1度着替えたんだってね。知人に写真を見せてもらったとき、君はピンク色のドレスを着ていた。」


確かに、着替える前の姿を彼は見ていなかった。


到着が遅れて、彼が私の姿を見たときは青木様からもらった水色のドレスだったはずだ。


「ドレスだけじゃない、俺と話していた時に君が身につけていたティアラ・ネックレス・手袋・ヒールも全く別のものだった。だけどイヤリングは初めも同じものをしていた。しかも今日もそれをしてきている、さてなぜでしょう?」


顔をこちらに向けて小首をかしげたってことは、私に答えを要求してるってことだ。


クイズ形式の話し方も、悪いない。


私はちょっと考えてから答えを出した。


「そのイヤリングだけが特別だった?」


答えに自信が持てず、思わずはてなマークをつけてしまった。


「あはは。なんでハテナマークつけるの?君の気持ちだろう。多分それが答えで、俺もそう考えた。」


つまり、イヤリングだけが特別だったってことは、誕生祭でもらったものの可能性が高いってことか。


「なんだ、わかってんじゃん。」


うん、だんだん彼と打ち解けてきた。


彼は素直で表情がコロコロ変わってお喋り好きで、でも相手のことを思いやってて、推理が好き。


あと、心が広い。


「…たけくん。」


「え?」


私はとっさに口から出た呼び名に自分で驚きながらも、またもや平然として答えた。


「うん。たけくんじゃ、ダメかな?」


ウゥ、かなり恥ずかしい呼び名なのはわかってるけど、なんかしっくり来ちゃったんだよね。


多分私、今ムスってなってる、かなり酷い顔だ。


思わずうつむいたままたけくんを見上げると。


「ッ!」


目のあったたけくんは思いっきり目をそらして顔を適当な方へ向けた。


「…」


そのまま沈黙に突入してしまったため、たけくんの腕を取り揺さぶる。


なんか返事をしてもらわないと、ちょっとこの雰囲気に困るんですが。

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